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よくある間違い

「計器飛行をとる前の訓練中、教官と一緒にIMCで飛びました。でもまだ計器飛行証明がないので、IMCの分の時間はPICとしてログ出来ません。 」

答え:出来ます!

"To Act" or "To Log"?

試験官レベルでもしてしまう勘違いです。「まだ計器飛行証明がないからIMCではPICとして飛べないではないか」といわれます。それならば、IMCでなくVMCであれば、PICとして「計器飛行」が出来るのでしょうか?

FAR パート61.3(e)には

”No person may act as pilot in command of a civil aircraft under IFR or in weather conditions less than the minimums prescribed for VFR flight unless that person holds:

(1) The appropriate aircraft category, class, type (if required), and instrument rating on that person's pilot certificate for any airplane, helicopter, or powered-lift being flown”

とあります。つまり「計器飛行証明を持たないものは計器飛行では機長として『アクトしては』ならない。」とあります。計器飛行というのは、天候にかかわらず、IFRフライトプランをファイルして、IFRクリアランスをもらい、管制官から他のIFR機との間隔を取ってもらって飛ぶことです。そうであれば「VMCであれば機長としてログできる」というのも怪しくないでしょうか?

今度は FAR パート61.51を見てみましょう。

(e) Logging pilot-in-command flight time. (1) A sport, recreational, private, commercial, or airline transport pilot may log pilot in command flight time for flights-

(i) When the pilot is the sole manipulator of the controls of an aircraft for which the pilot is rated

要点は「自家用飛行士は限定を持っている航空機を単独で操作している時間をPICとして『ログして』かまわない」とあります。先ほどとの違いがわかりますか?前の例は「アクト」、次のは「ログ」というように一言だけ違うんです。法律は言葉遣いに敏感で、このたった一言の違いが大きな違いを呼びます。

計器飛行証明が必要になるのは、PICとして「アクト」する時であって、「ログ」するためではない。訓練中にIMCで飛んでいるときにPICとしてアクトしているのは教官です。生徒はPICとしてアクトしていませんし出来ません。ただ、この単発機の操縦をしているのは、自家用単発を持っている訓練生です。彼はPICとして「ログする」ための要件は満たしています。だから「PICとしてログする」ことは法律上全く問題ありません。ログするためだけであれば、計器飛行照明は必要ありません。

教官のログはどうなるの?

生徒がPICとしてログしてしまったら教官はどうログすればいいのでしょう?FAR パート61.51(e)

(3) A certificated flight instructor may log pilot in command flight time for all flight time while serving as the authorized instructor in an operation if the instructor is rated to act as pilot in command of that aircraft.

「公認教官は自分がPICとしてアクト出来る限定を持っている航空機で教官として従事しているすべての時間をPICとして「ログ」してもかまわない。」というわけでこちらもログ上はPICに出来ます。二人ともPICなんですか?そうです、ログ上は。実際にPICとして「アクト」しているのは計器飛行証明を持っている教官ひとりです。

このようにFARは機長として行動できるための条件とログできるための条件を完全に区別しています。そのため同乗教育時間がそのままPIC時間と重なるので「同乗教育+ソロ+PIC=総飛行時間」という公式が成り立ちません。おそらく昔はもっとシンプルだったんでしょうが、計器飛行校証明取得後事業用を目指す人から、「事業用に必要な100時間のPICがいつになってもたまらない」という苦情があったのだと思います。余計なお金を少しでも使わずにPIC時間をつけさせてあげようという親心。

ちなみに日本の航空局はこれを認めていません。アメリカでは通用したのに、日本の書き換え時に「認められないので削除してください」といわれ、削除したら日本の要件を満たせなくなった、という話も聞きます。ご用心。

08-28-2013