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映画「ハッピーフライト」にみるADM

「ハッピーフライト」を観た。綾瀬はるかが出ているということで前から気になっていたのだが(早くおっぱいバレーが観たい)ようやく見ることが出来た。

大筋で、離陸直後のバードストライクにより計器に異常が生じ、羽田に引き返す、という部分には少しがっかりした。ハッピーというよりも無事に戻れて「ラッキー」というかんじだ。

それはさておいて、この映画では一つのフライトを支えている様々な人々、グループを平行して描いている。計器の異常によって起こった事態に対処したのはコックピットだけではなく、客室乗務員、ANAのオペレーションルーム、管制塔、チェックインカウンターの人やインターネットを含む多くの人たちだった。これはまさに、クルーリソースマネージメントのよい例だ。そういう意味でもパイロットにはお勧めの映画だ。

最初、離陸前に整備のほうから右のピトーヒートが作動していないことを告げられる。機長昇格試験を受ける主人公は、MELと気象予報からフライト可能と判断する。右のピトー管が着氷で駄目になっても左の系統がある。

離陸直後、期待は鳥の群れの中を通過。エンジンには入らなかったものの、窓を直撃した。それ以外に被害が無いかを確認するため、機長(時任三郎)はCA二確認させる。その後の上昇中、あほな主人公は小さな雲をよけきれず通過。機長に着氷した可能性を指摘される。

しばらくして客室乗務員から、翼に鳥があたったという目撃者と地のようなものが付着していると報告をうける。そして、エアスピードインディケーターが異常を示す。速度が遅い!主人公の決断「機種を下げ、高度を落としつつ機速を増す。」そのとき警報が!時任機長が気づく。「本当は機速は速い。速すぎるからの警告だ。」機首を戻しスラストを下げ、ようやく機体は落ち着きを取り戻した。

機長が主人公に聞く。「このままハワイに向かうか?」主人公の決断「羽田に引き返す」。時任機長が状況をANAオペレーションルームに無線で報告。緊急事態を宣言。

主人公は、着氷ならば高度を下げれば気温が上がり解けるはず、と下降を提案。機長は「燃費を考えろ」。ジェット機は低空では燃費が悪く、羽田まで届かない。高度を落とせないままの飛行が続く。

そのころ羽田に台風が接近中。落雷のため、ANAオペレーションでは使用できるコンピュータがわずか。チーフ(岸辺一徳)の判断で、空港の模型をロビーから運び込み作戦版にする。一方チェックインカウンターの女子は、飛行機オタクから教えてもらったホームページにアップされている写真を持ち込む。どうやら離陸直後に鳥が左のピトー管を直撃したことが判明。

機内では、ある乗客が「ハワイに行け」と叫んでいる。機長は、客室のことをチーフパーサーに一任し、フライトに専念。積乱雲をよけつつランウェイ32を目指す。横風成分は制限を越える。

オペレーションルームの岸辺は台風が通過し、風向きが変わることを予測。ランウェイ14に下りるよう指示。半信半疑でファイナルに向かう。高度が高すぎるので早めのギヤダウン。ついにエアスピード回復!そして岸辺の読みどおり風が減り。横風制限値内に。機体は無事接地。

このように、機体内外のありとあらゆるリソースが効果的にかつようされ、問題を解決していく。まさに教科書どおりだ。

ただ気になったのは、時任機長。最初は厳しく、客室乗務員にも厳しく、しかしクールで冷静な人、と思っていたら、本当に大事な場面での決断が「まあ、いいだろう」という基準になっている。いいのか、本当に?根拠が無いんだ。勝算と言い換えてもいい。まるで一か八かの判断がたまたま当たった。だから「ラッキーフライト」という印象をぬぐえない。パイロットは勝負師魂ではなく論理的な思考が欲しい。逆に飛行機に乗るのが怖くなるんじゃないかと思える部分だった。

対照的なのが岸辺一徳。台風の進路と速度を的確に判断し、結果を予測する。長年の経験と知識が無いと出来ない的確な判断だ。新しいコンピュータ機材には対応できていないがこういう人の力はまだまだ必要だ。ベースギターもうまいし。

04-04-2010