P51

場所:ホリスター空港

 第二次大戦中世界最強の戦闘機とうたわれたP-51ムスタング。大戦後も世界各地で活躍し現在もアメリカのいたるところで飛行中の機体。ゼロ戦ではでき なかったマニューバーも平気でやってのけるこの機体は日本のパイロットからもうらやましがられたという。

 そのムスタングに乗ってみようというのだ。残念ながら訓練用の複座機ではなく、単座機の後ろにオブザーバーシートを取り付けたものだがムスタン グを体験できるならそれでもいい。私は乗ったことが無い。なぜならたった30分で$500($750, 2010年)もする!これは高い、と考えるか安いと考えるかであなたの経済力とどれほど飛行機好きなのかがわかってしまう(そんなことないやろけど)。

 場所はうちの空港から30マイルほど南東の Hollistar空港。ここにはムスタングが5機保管されている。もちろん全部ぴかぴかに整備されていてまるで昨日今日完成仕立てのように見える。全機 飛行可能。そのうちの1機の所有者が維持費稼ぎに体験飛行させてくれるのだ。生徒の一人が挑戦した。彼は日本人でありながらムスタング大好き。私はビデオ 撮影係。

 しっかりランナップした後滑走路を離れる。脚が引っ込む。速い。あっという間に見えなくなる。どうやらサリナスからワトソンビルの海岸付近を飛 んでたらしい。しばらくしてエンジン音が聞こえる。ムスタングが進入してきた。いきなりベースから入ってファイナルにターンしている。脚が出ていない。そ のままエンジンの音をましてローパス。目の前を風を巻いて通過。上昇にはいるや否や機体が左に傾く。そのまま回転を続けアップウインドでいきなりロール。 その後パターンを回り脚を出して着陸。こちらに向かって独特の胴体の側面を見せながらタクシーしてくる。

 体験した生徒の感想。「もう言葉にならないほど感激!」彼はその後かのショーンタッカー氏に師事しアクロバットパイロットへの道を歩み出した。

 フロリダには本当に複座のムスタングで飛行教習をやっているところがある。こちらは1時間2000ドル。「何のためにそんな必要があるの?」と 首をひねるだろうが、実際需要があるのだ。というのも飛行機売買の雑誌にはP-51、B-25、スピットファイヤーなどの機体の広告が出ている。ちゃんと 市場に出回っているのだ。戦勝国だから機体も残っており結構数も多い。相場は約1億円。それを買う金持ちがいる。当然訓練が必要になる。改めてアメリカと いう国のスケールのでかさを痛感する。