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イメージトレーニングの重要性

スポーツでも何でも、スキルを学ぶときにはイメージトレーニングが重要であるというのは周知の事実だが、ちゃんと出来ているだろうか?うまく活用すれば飛行訓練がスムーズに行くけど、案外失敗してたりする。

イメージトレーニングの二通り

ひとつは、成功して幸せな気分になっている自分の姿をイメージすること。飛行機の訓練であれば、マニューバーがうまく出来てほめられている様子とか、試験に合格したこととか、実際に旅客機のコックピットに座っている姿とかを想像して幸せな気分になる。

もうひとつは、それぞれのマニューバーや 離着陸の手順を映画でも見るように何度も反復して、体がそのとおりにうまく動くように練習すること。実際の訓練で最も必要とされるのはこちらだ。人間の頭は空中では6割しか働かない。地上でしっかり出来ることが、空中ではそこそこしか出来ない。地上でそこそこのものは上空ではハチャメチャだ。

落とし穴

なかなかスローフライトなどのマニューバーがうまくいかない生徒がいる。「イメージトレーニングやってますか?」と聞くと「もちろんやっています。」けれど、飛んでみるとやはりいまいち。特に多発機は時間当たりの単価も高く、こんなところでもたもたしていたくないのだが。思い切って「昨日、イメージトレーニングをどのくらいしましたか?」と尋ねてみた。「スローフライトとかストールとかVmcデモとか10回くらいずつやりました。」本当か?もうひとつ尋ねてみた。「それだけするのに何分かかりましたか?」答えは「15分くらいです」やはりな!だめだこれでは。これがよく陥るわなだ。

15分だからだめなのではない。それぞれ10回やったはずなのに15分というのがおかしい。それでは1回あたり何分かかったんだ?1分もかかってないことになる。 それがだめだというのだ。本当にスローフライとなりストールなりを1回行うのに何分かかるだろう?多発機なんかは減速にも時間がかかるため結構な時間だ。決して1分では終わらない。それを1分もかけずに終わっているのでは中身が無い。無さ過ぎる。

それは結局手順を「せりふ」として口で覚えているだけで、体は覚えていない。手順を暗誦できても飛行機は飛ばせない。「フラップ10度」と口で言えても、飛行機の中でフラップのスイッチがどこにあるのかわからないままでは何にもならない。体を使ってのイメージトレーニング。筋肉に覚えさせたい。

さらに大切なのは「目」だ。目を動かす練習をしなくては。例えばスローフライトでも、マニューバーを始める前に、地平線とカウリングの間隔を覚えておき、減速のためにスロットルを下げるが、この時、マニフォールドプレッシャーゲージではなく、最初はカウリングを見ている。そしてそろそろ目標の値になったかなというときに初めてマニフォールドプレッシャーゲージで確認。ランディングギヤを出すときにも、スイッチをじっと見ず、場所だけ確認したら目はすぐにカウリングに戻し、スイッチを下げる。そうすると機首があがろうとするので操縦桿を少しだけ押し、上がり過ぎないようにする(地平線とカウリングが見えているように)・・・などなど、実際に飛んでいる状況を再現していけば1分では終わらない。窓の外の地平線まで見えているかのように、ランディングギヤやフラップを出し入れしたときの空気の反応を感じるくらいまで飛行を再現してみるのが本当に有効なイメージトレーニングだ。飛行機でやるのと同じくらいの時間をかけてやること。これをじっくりやれば1時間くらいかかるだろう。しかしそれはきっと報われる。イマジン想像しろ!目の前の地平線を。地上で飛ぶのは只だ。地上で出来ることを機上でするな。お金をセイブするには、どれだけ地上で本当に有効なイメージトレーニングをやったかにかかっている。